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TIDEPOOL OCEAN ACADEMY 「せかい」水曜日

戦争のなくし方

こんにちは(^^)/ 「せかい」クラスの月いち講師、はらみづほです。

ウクライナとロシアの戦争について毎日のように報道されている昨今、このクラスでも「戦争」について語り合うことにしました。

私は世界を旅している時、戦場となっているパレスチナ自治区とイスラエルを訪れたことがあり、そこでの体験が人生に大きく影響して今に至ります。

なので、その時の体験談を子どもたちに伝えたいとずっと思っていました。

今回スタッフのメイさんが、「せかいクラスなのに今回の戦争について話題にしないのは不自然だな、と思っていました」と伝えてくださったことに背中を押され、重い話題なので取り上げるのを躊躇していた「戦争」をテーマにしようと決めることができました。

どこの国について話すにしても、まずもっとも大切な基本は日本人の氣質と個性を持つ自分自身を大事にすることだと私は考えているので、いつものように、クラスは日本式のごあいさつからスタートです。


背筋を伸ばして正座をしたら、背中は曲げず背筋を伸ばしたまま足の付け根から上半身を折って、両足の太ももの上に置いた両手をスッと前にすべらせて床につき…

同席している人々の目を見て「本日もよろしくお願いいたします」と言ってから頭を下げます。このクラスでは、このとき敢えて一人一人としっかりニッコリ目を合わせまなざしを交わすことで、ひととき心をつなぐことを意識して…


最後はゆっくり頭を上げ、床に置いた手を両足の太ももに戻します。

このごあいさつは、私がお茶の師匠から教わったもののアレンジ版。

相手と一定の距離を保ちつつ頭を下げ、所作とまなざしで心をつなぐこの動作は、謙虚さと自信、互いを対等に尊重する礼節と丹力…が自ずと培われてゆく、美しい動作だと私は思っています。

毎回やっているので、少しずつ子どもたちにも身についてきた様子。いつか着物姿でお茶のお手前を体験する機会が持てたら、このごあいさつの意味をより深く体感してもらえるかもしれません。

さて、ごあいさつの後は、いよいよ「戦争」について語る授業の始まりです。

「みんな、ウクライナとロシアの戦争のことは知ってる?」

と投げかけると、「知ってる~」「ニュースで見た!」とのこと。

地図を広げてみんなでロシアとウクライナの場所を探し、話を続けます。


私:「ニュースを聞いてどう思った?何か思ったことはある?」

すると子どもたちから少しずつ、「ロシアが悪い!」「プーチンひどい!」という声がポツポツと湧き起こり、その後一人の子が思い余った様子で、こんなふうに答えてくれました。

「プーリン(プーチンと言いたくなくて、わざと別の言い方をして)はひどいと思う!ぼくはニュースを見た後ものすごく怒ってがまんできなかったから、自分の部屋に行って、今ここでみんなには言えないくらいひどい言葉で文句を言ったの!」

その子の表情や言葉から言葉にならない激しい憤りが伝わってきた氣がして、私はふいに胸がいっぱいになり、

「そうだったの…!よく話してくれたね!そんなふうに言わずにはいられないほど、ものすごく怒ったんだね…!」

と言って、その子の目を見つめました。


すると、その様子を見ていたみんなが口々に、「プーリン!」「ぷーにゃん!」「ぷーさん!」と、ケタケタ笑いながら口々に“おもしろネーミング”を叫び始めました。

私はその様子から、「深刻にならないようにしたい」という子どもたちの想いと、その奥にある不安や戸惑いを感じ(それが事実かどうかはわかりませんが、そんな氣がしたのです)、胸がつぶれるような、途方に暮れるような感覚になりました。

だから少しでも胸にある想いを吐き出してほしくて、

「他のみんなはどう思ってる?思ったこと、自由になんでも言ってみて。みんなの氣持ちを、どんなことでもいいから聴かせてくれる?」

と伝えると、別の子が、

「みんなロシアが悪いって言ってるけど、ほんとに悪いのは武器を売ってるアメリカだって聞いた」

とのこと。さすがタイドプールっ子!オトナ顔負けの核心を突いた発言です(笑)。



「ワーオ!そんなこと聞いたんだ!確かに、爆弾落としたりしてるってことは、その爆弾を作って売ってる人たちがいるってことでもある。つまり、戦争でお金儲けしてる人たちがいるってことだよね!そのことに氣がついたなんて、すごいなぁ!」

思わずそう答えた後で、私はいよいよ本題に入りました。

「私はね、世界の旅をしてた時、戦争をしている場所に行ったことがあるの。今日は、そこで実際に見たり聞いたりしたことをみんなに伝えたいと思います。私はそこで人生が変わるほど大切なことを学んだと思っていて、それをみんなにもぜひ知ってほしいんだ」



「私が体験した戦争の場所は『パレスチナ自治区』というところで、そこは『イスラエル』という国の中にあるの。この『パレスチナ自治区』に住んでいるパレスチナ人と、『パレスチナ自治区』以外の場所に住んでるイスラエル人たちが戦ってるんだけど、地図で探してみよう。どこにあるかな?」


(↑東京新聞のWEBサイトからお借りしました)

『イスラエル』はアラビア半島の左肩あたりに位置し、大きさは日本の四国と同じくらい。『パレスチナ自治区』はその中に、「ガザ地区」と「ヨルダン川西岸」の2か所に分かれて存在しています。

『イスラエル』は世界中に散り散りになっていたユダヤ人たちがつくった国で、国連は認めていますが、アラブの国々の一部やパレスチナ人たちはその存在を認めていません。

ユダヤ人と言えば、ナチスから逃れるために屋内にひっそりと隠れ住んでいた家族の中の少女が書いた「アンネの日記」が有名ですが、迫害や虐殺を被ったユダヤの人々は今、自分たちの悲願を叶えたイスラエルという国の中で、自分たちが被ったことと同じようなことをパレスチナ人たちにしている、という皮肉で悲しい現状があります。

私がこのエリア(イスラエルとパレスチナ自治区)を訪れたのは、2002年6月。「イスラエル側の安全を確保する」という理由でヨルダン川西岸に巨大な隔離壁が建設される直前のことでした。

私は雑誌連載やラジオ番組を持ちながら6大陸60か国を6年間一人旅したのですが、その旅の中で出会ったパレスチナ人家族とのご縁がもとでこのエリアを訪れることになり、パレスチナ自治区に行くに当たっては、その家族を通じてパレスチナのNGO「PARC(パルク)」を紹介してもらい、ガザとヨルダン川西岸にある、彼らの活動地を訪ねました。

私が著書『できた!電気代600円生活(北海道新聞社刊)』に基づく講演で必ず語っていて、このクラスの子どもたちにも最も強く伝えたかったエピソードは、ヨルダン川西岸にある人口2000人のカタンナ村に訪れた時に出会った、イスラエル青年兵との対話でした。

その時のことを書いたページをここに公開しますので、どうぞ読んでみてください。






「誰も憎んでいないし、誰も殺したくない!」

イスラエル青年兵のその叫びは、今も私の心の中でこだまし続けています。

そして、「オレには何もできないんだ!」と叫ぶ彼に、「そんなことない!あなたは何だってできるよ!」と叫び返した自分の声も。

このクラスの日、私は話しながらその時のことを思い出して思わず涙がこみ上げてしまったのですが、子どもたちはそんな私の話を、かたずをのんで聴いてくれていました。


私がこの体験談を通して伝えたかったことは、

➊侵略している側であっても「殺したくない!」と叫んだ兵士が実際にいて、直接その叫びを聞いた私は、「彼の叫びはほとんどの兵士の本音なのではないか」と思っていること。

➋戦争は、お金儲けしたい人々がウソの情報を流して人々が対立するように仕向けているために起きている、と考えられること。不信感を感じると人は交流・協力をしなくなり、交流・協力せず不信・不安が蔓延している土地では、そこにある様々な資源(人・土地・モノ)をよそ者が支配しやすくなる。

破壊された土地には、「援助」という形で再生のための手が入り、結果的に援助した企業や国が儲かり、援助された方は借金が返せなくて支配されていく、という構図が世界中で展開しています。(これは戦争の理由を探求した結果たどり着いた一つの確信で、調べたり学んだりすれば誰でも氣づくことができます)

➌誰かや何かの意見を鵜呑みにしたり、少ない情報だけで物事を決めつけたりすることは「いのちの危険」につながりやすく、様々な意見や考え方を知って、感じ、考え、語り合うことが、「安心安全」につながりやすい、ということ。(これも私の約20年の学びと経験から実感していることです)

➍お金儲けを最優先している「企業(または企業から多大な献金を得ている政治家や自治体)」が広告を出したり関係したりしているメディアからの情報は、多かれ少なかれ「お金儲けを優先している人々」にとって有利なように情報操作(または自己規制)されているので、スポンサーが付いているメディアからの情報を鵜呑みにするのはとても危険であること。(私は大手広告代理店に勤めていたので特にそれを痛感しています)

❺誰がなんと言おうと、自分が感じたことや、自分がやりたいと思うことをいちばん大切にしてほしい。やりたくないことはやりたくないと言っていいし、やらなくていい、ということ。「正直な自分を表現すること」と「人々と心からつながること」の両立は可能です。

➏(授業内では伝えきれませんでしたが)一人一人のふだんの自分の言動が、確実に世界に影響していくこと。(生きていくために必要なあらゆるモノ・コトを通して私たちは日本中・世界中の土地や人々とつながっているため、一人の人間はたとえ無自覚であっても、生きているだけで日本中・世界中に影響を与えています)




授業の最後の時間には、「ロシア人とウクライナ人」両方に大人氣の「ビーツ(どちらの国でもポピュラーなスープ「ボルシチ」の原料として有名)」をサラダにしたものと、「パレスチナ人とユダヤ人(イスラエル人)」両方に大人氣の「フムス(ひよこ豆と練りゴマのペースト)」を、みんなでしみじみ味わいました。






戦っている敵同士も実は同じものを食べていて、顔も言葉も似通っていてまるで兄弟姉妹みたいだったりする。

両方の民に愛されている食べものを味わいながら、「戦争」や「侵略」がいかに奇妙なことかをみんなで噛み締めました。


さっきまで私の話をかたずをのんで聴いてくれていた子どもたちは、氣楽な試食時間になってホッとした様子。笑

「おいしい…!」「ぼく、コレけっこう好き」「フムス、食べたことあるよ!」と、話してくれて、久々に感情が高ぶってしまった私も、みんなのあたたかな声や表情にホッとして、無意識のうちに入っていたらしい体のチカラが抜けました。笑

「今日のクラスはどうだった?何が印象に残った?」と最後にみんなに尋ねると、みんな「フムスがおいしかった」と笑いながら回答。笑

でも、その言葉を言う前後の沈黙やモジモジした様子や、「それだけじゃないけど…」と言いよどんだ子の姿から、「あぁ、言葉にならないことを受け取ってくれたんだな…」と感じることができて、胸がいっぱいになりました。


しみじみ試食タイムを終え、最後はまた、二人の日直さんのリードで日本式のごあいさつ。


今回はちょっといつもと違う雰囲氣の授業でしたが、いつもはやんちゃな子も集中して聴いてくれていたことやみんなのまなざしから、私もスタッフの皆さんも、言葉に収まりきらないものを彼らが受け取ってくれた手ごたえを感じた時間となりました。

みんな、ありがとう!

また来月も、元氣に会おうね!

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